コロナ対応・東北6知事の手腕点検

2020年05月25日

2枚目/6枚中

全国知事会のテレビ会議に臨む三村申吾青森県知事

 新型コロナウイルスが猛威を振るう中、特措法に基づき権限が強化された都道府県知事に注目が集まっている。東北6県への緊急事態宣言は14日に解除されたが、知事はこの間、感染の封じ込めに手腕をどう発揮したのか。間近で言動を追った記者が振り返る。

■青森 休業要請で遅れ、対策に独自色なし

 青森県の三村申吾知事が休業要請の対象と協力金の具体額を決めたのは大型連休が迫った4月24日。東北6県で最も遅く、全国的に見ても最後発に近かった。
 野党系県議は「躊躇(ちゅうちょ)なく対策を打つ、と言っていながら躊躇していた」と指摘する。廃業の瀬戸際に追い込まれている事業者の心情を思えば、もっと早く道筋を示せなかったか。
 水際対策や検査体制の充実を巡っても、独自色はほとんどなかった。緊急事態解除の際に発表したのは「新しい生活様式」を定着させるためのキャッチフレーズ「離れるやさしさ~あなたへのおもいやり」。外部委託して作成した。
 副知事2人とともに給与などを減額する。期末手当を受け取らない東北の知事は他にもいるが、給与に手を付けるのは三村知事だけ。「県民と痛みを分かち合う」姿勢を、この一点で演出しようとしたのだろう。
(青森総局・高田瑞輝)

■岩手 早々に厳戒態勢、協力金は最低水準

 感染者未確認が続く岩手県の達増拓也知事。東日本大震災の経験を踏まえて「いざという時に自分で考え、行動することができる」と県民を称賛、危機下の求心力維持に腐心する。
 3月下旬に東京方面からの来県者に外出自粛を求める水際作戦を発動。早々の厳戒態勢で感染拡大を抑えている自負もちらつく。
 県外ナンバーへの嫌がらせなど行き過ぎた警戒感が広がると発言を徐々に修正。15日の会見では、逃れてきた源義経を討った直後に滅んだ奥州藤原氏に触れ「他県の方を虐げないで」と寛容さをアピールした。
 緊急事態宣言解除後は、感染観察都道府県との往来を解禁。地域経済回復へそろりと踏み出すが、これまでの具体策は物足りなさも。休業協力金は東北で最も低い水準で、ある自民党県議は「まったく不十分」と不満を漏らす。
(盛岡総局・片桐大介、北村早智里)

■宮城 9月入学で存在感、PR過剰と批判も

 「ピンチはチャンス。危機でこそ、新しいことに取り組める」。宮城県の村井嘉浩知事が、有事の際に多用するフレーズだ。
 新型コロナの対応でも、その信条を貫く。臨時休校の長期化を踏まえ、9月入学制を提言。国や教育界に一石を投じ、存在感を示した。
 足元の感染対策は手堅い。無症状者の療養先となる民間宿泊施設の借り上げ、ドライブスルー方式によるPCR検査の検体採取など、目新しいアイデアを次々と具現化してみせた。
 半面、村井流には「アピール過剰」の批判も。中堅県議は「県トップとして露出が多いのは当然だが、中身よりPRが先行してはいないか」と苦言を呈す。
 「必ず来る」とさえ言われる感染第2波に備えつつ、どのように東北経済の回復をけん引するか。苦境を抜ける出口戦略に向け、その真価が問われている。
(報道部・土屋聡史)

■秋田 協力金は東北最高 PCR検査柔軟に

 秋田県の佐竹敬久知事は、東北で最高額となる最大60万円の休業協力金、国の検査基準に縛られないPCR検査の柔軟運用といった対策を次々と講じた。スピード感を重視した施策展開には評価の声も多い。
 突き動かしているのは過去の苦い経験だ。2017年7月、記録的豪雨で県内に避難勧告が出される中、宮城県内でゴルフ、飲酒をしていたことが発覚。初動対応が遅れ、自身の危機管理能力が問われた。
 「あれは大反省」と振り返り、「今は細やかな現場感覚でやっている。(方向性は)ずれていないと思う」と自信をのぞかせる。
 その一方で、休業要請の対象とならない事業者への支援を巡る県議会の議論では「予算配分は選択と集中が必要だ」と一蹴。その後、秋田市が支援を決めたこともあり、与野党から「あまりに冷たい」(自民党県議)と批判の声が上がる。
(秋田総局・佐藤駿伍)

■山形 県境検温で往来激減、実効性は疑問も

 山形県は大型連休とその前後、感染拡大防止で独自に県境付近で検温を行った。吉村美栄子知事は「来県抑止になった」と胸を張る。ただ緊急事態宣言の全国拡大と重なり、人の往来は激減。職員ら延べ1000人超と予算を投入した施策の実効性には疑問が残る。
 検温を提案した自民党の一部国会議員と発足させた県新型コロナ総合戦略会議には「行政権への介入」と批判が相次いだ。同会議の考え方をほぼ踏襲した県政運営は主体性を欠き、責任の所在も不明確だった。
 それでも東北他県などと県境を越える移動自粛を求めた「東北・新潟緊急共同宣言」は吉村知事が提案。一定の抑止効果はあった。
 県内初の感染者確認後、記者会見で連日、2週間以上も県民に語り掛けた姿勢は評価できる。が、発言内容は良くも悪くも無難。先行きの見えない中、明確なビジョンが求められる。
(山形総局・岩田裕貴)

■福島 要請解除に慎重、医療支援論をけん引

 福島県の内堀雅雄知事は東北で最も遅い15日に休業要請を解いた。当初の予定はさらに先の6月1日で「大きく構えて小さく収める」という危機対応の原則通りと言える。首都圏の近さに何度も言及しており、東北の他県とは別種の危機感があったのは間違いない。
 県は新型コロナ患者を受け入れる医療機関への「空床補償」を東北で唯一、国基準に上乗せして支払う。これを踏まえ、12日の全国知事会のウェブ会議では「国は実態に見合った補償単価の設定を」と主張。医療現場への支援の議論をリードしていると評価できる。
 一方、4月28日の将来世代応援知事同盟のウェブ会議での発言はしらけた。聖火リレーは福島から出発予定だったと前置きし「来年の東京五輪を大成功させよう」と述べた。話題にする時機を見誤っており、かつての流行語「KY(空気読めない)」を思い出した。
(福島総局・関川洋平)

最新写真特集

記事データベース

企画特集

先頭に戻る