<東日本大震災 復興人>「食」が結ぶ福島支援 催し60回 ファン開拓

2019年09月03日

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移住関連セミナーで参加者に福島で暮らす魅力を伝える三廻部さん(右)=東京・有楽町

◎福島市・飲食店運営会社PR事業部長 三廻部麻衣さん(38)

 「私は大の福島ファン。福島に縁がある人まで無条件で好きになるんです」
 福島県主催の移住関連セミナーが8月に東京であり、進行役を務めた福島市の会社員三廻部(みくるべ)麻衣さん(38)が満面の笑みで参加者に語り掛けた。
 移住4年目。東日本大震災後に創業し、東北産の食材をメインに扱う飲食店を東京・赤坂で複数展開する「トレジオン」(東京)で働く。
 同社は東北の自治体などと連携し、農家や漁師と交流しながら旬の農水産物を味わう店内イベントに力を入れる。福島を拠点に関係者を訪ね歩き、企画を練るのが三廻部さんだ。
 出身は埼玉県入間市。東日本大震災が起きた時は、東京で大手衣料チェーンの店長をしていた。
 報道される被災地の惨状、特に東京電力福島第1原発事故に心を痛めた。古里を追われ、家族とも離れ離れになった人々。見えない放射線との闘い。増え続ける震災関連死-。
 学生時代に犯罪被害者の支援に携わった経験から、「同様の理不尽さに直面した福島の復興に関わらないという選択肢はなかった」と振り返る。

 2014年4月、復興庁に転職し、期間業務職員として働く傍ら東北に通った。「人を感動させるパワーに満ちた農水産物との出合い」(三廻部さん)が、現在の仕事の原点となった。
 東京で被災地をテーマに開かれるイベントは、顔触れが固定化しているようで残念に感じていた。「誰もが気軽に被災地との関わりをつくれないか」。思い付いたのが「食」を入り口にする方法だった。
 豊かな食材や地酒で参加者を「東北ファン」にし、「被災地を日常に届ける」企画を16年3月に始めた。大事な1次産業の支援にもなる。そんな中でトレジオンを知り、福島市の一般社団法人勤務を経て18年4月に入社した。
 店内イベントは18年度に約60回を数え、参加者は延べ3000人を超えた。「東北の知人ができれば、漠然としていた『被災者』『被災地』が具体的な個人、地名になる。日々の中で心を寄せ、現地を訪れるきっかけになる」と狙いを語る。

 福島の復興を一言で言い表すのは難しい。個人の置かれた状況や心境も千差万別だ。「グラデーション」に満ちた現状をありのままに伝えようと県内外に避難する被災者らを囲み、思いを聴く活動にも取り組んでいる。
 「ありがとう」。以前、あるイベント後に同世代の女性の友人に感謝された。復興のために何かしたくても、仕事や子育てで忙しく簡単に行動できない人は大勢いる。その思いを受け止める場をつくり、被災地と結び付けようと誓う。
 福島の人に「幸せになってほしい」と願ったあの日から間もなく8年半。「厳しい現実から目を背けずに生きる姿勢、心根の美しさにほれ込んでいる。一緒に時間を重ね、自分ができる役割を果たしたい」。福島に根差し、共に未来を創り出す。(報道部・東野滋)=随時掲載

<描く未来図>当事者の声伝える

 被災地には豊かな農水産物があり、魅力的な生産者も大勢いる。発信を続けることで応援したい。困難に直面した福島の人たちからは、大きな災害をくぐり抜け、未来を生き抜く力を学べるはずだ。当事者の言葉をもっと聴き、被災地の外に伝えていきたい。

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