<常磐線>希望の鉄路 街つなぐ

2016年12月10日

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東日本大震災の津波被害を受け、新設された高架式の線路を試運転で走るJR常磐線の車両=2016年11月5日、宮城県山元町の山下駅付近

 東日本大震災の津波で甚大な被害を受けたJR常磐線相馬(相馬市)-浜吉田(宮城県亘理町)間の運行が10日、再開する。
 駒ケ嶺(福島県新地町)-浜吉田間では、線路が最大1キロ余り陸側に移され、一部が高架式となって生まれ変わった。山下(宮城県山元町)、坂元(同)、新地(新地町)の3駅は内陸に移設され、それぞれの駅前では新たな街づくりが着実に進む。
 多くのものを失ってしまったあの日から5年9カ月を経て、仙台圏と相馬地方が再び鉄路で結ばれる。地域住民の復興へ向けた希望を乗せ、真新しいレールの上を列車が走りだす。

◎山下/都市機能 駅西に集中

 海岸から約2キロの新山下駅周辺には、町沿岸部の被災者が集団移転する「つばめの杜地区」が整備された。総工費は約166億円。
 水田約37.4ヘクタールを造成し、宅地201区画、災害公営住宅346戸を用意。都市機能を集中させる「コンパクトシティー」が売りで、主な施設と住宅が駅西側に建設された。
 8月末時点で1029人が住み、最終的には1200人以上が居住する。10月下旬には街の完成を祝う「まちびらき」が行われた。
 駅西側に沿岸部から新築移転の山下二小、保育所や児童館などからなる子育て拠点施設、1.5ヘクタールの都市公園が隣接して建設された。駅前の商業区画1万1200平方メートルでは、食品スーパー「フレスコキクチ」とドラッグストア「薬王堂」がまちびらきに合わせて営業を開始した。
 駅東側には集合タイプの災害公営住宅が建設されたほか、災害時に防災拠点にもなる地域交流センターの建設が進む。2017年夏の完成を見込む。
 つばめの杜地区と周辺地区を結ぶ交通網の整備も進められている。今年3月にはつばめの杜地区と国道6号を結ぶ「つばめの杜大橋」が完成した。

◎坂元/新旧集落の連携強化

 海から約1.5キロの新坂元駅の西側約10.3ヘクタールには、集団移転先として「新坂元駅周辺地区」が水田を造成して整備された。総工費は約59億円。
 宅地は40区画を用意。災害公営住宅は72戸を計画しているが、このうち集合住宅(16戸)は建設工事が遅れており、来年3月の完成を見込む。8月末時点で193人が住み、最終的には250人前後が居住する。
 駅前では郵便局とコンビニエンスストア「ローソン」が営業している。隣接する約9460平方メートルの商業用区画では、町が農産物直売所などの交流施設を整備する計画があり、観光拠点として期待される。
 防災拠点機能も併せ持つ地域交流センターの建設が進められ、来春の完成を見込んでいる。新市街地周辺には既存集落が隣接し、町は既にある行政区に新住民を編入するなどして新旧集落の連携を進めている。
 2017年3月までには、常磐自動車道の新地-山元インターチェンジ(IC)間の坂元地区に山元南スマートICが利用開始となる予定で、新市街地への交通アクセス向上が見込まれている。

◎新地/低炭素型 未来都市に

 移設された新地駅周辺では、福島県新地町が新たな市街地の形成を進める。東日本大震災で津波被害を受けた約24ヘクタールをかさ上げして宅地や商業ゾーンを整備。低炭素型の「環境未来都市」として、2018年春の街開きを目指す。
 宅地は100区画程度を計画している。一角には被災者向けの公営住宅も整備されている。耕作地が広がっていただけのかつての駅前とは景色が一変する。
 商業ゾーンでは、民間事業者が町内初となるホテル建設を予定する。温浴施設の計画も具体化しており、中心部にふさわしいにぎわいの創出が期待される。公営の商業施設も用意され、地元業者による物販などが検討されている。
 町内では現在、石油資源開発(東京)が液化天然ガス(LNG)の基地整備を進めている。20年までに23万キロリットルの貯蔵タンク、出力120万キロワットの発電所が立地するなど、東北のエネルギー拠点としての発展が見込まれている。
 これに合わせ、町は企業などと連携して独自のLNG発電所を整備。新市街地に建つ商業施設に排熱を供給するなど、エネルギー効率を重視した地域づくりを実践する。

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