被災少女の思いを絵本に 26日出版

2016年02月25日

1枚目/1枚中

出来上がった絵本を手にする神田さん

 東日本大震災で祖父を亡くした宮城県女川町出身の東北芸術工科大2年神田瑞季さん(20)=山形市=が作画を手掛けた絵本「なみだはあふれるままに」が26日、出版される。自身の体験が基になったストーリーに合わせ、津波で大切な存在を失った少女が悲しみから立ち直り、笑顔を取り戻していく姿を心温まるタッチで描いた。
 物語は「おれたち、ともだち!」シリーズなどで知られる童話作家内田麟太郎さんが書いた。神田さんをモデルに少女の心象風景を表現した詩に、神田さんが3年近くかけて水彩の絵を添えた。
 津波に破壊された町、喪失感に打ちひしがれる少女の姿がつらい記憶と重なり、筆が進まなかった。「暗い場面では多くの被災者の思いを想像し、明るい場面も元気が出ず描けなかった。技術も未熟で、描いては中断する繰り返しだった」
 震災当時中学3年だった神田さんは、祖父明夫さん=当時(78)=を津波に奪われた。行政区長だった明夫さんは住民に避難を呼び掛け、逃げ遅れたらしい。
 幼いころから絵を学んでいた神田さんは仙台市宮城野区の宮城野高美術科に入学。がれきと化した女川を前に手をつなぎ、立ちすくむ子どもたちの後ろ姿を描いた作品「生きる」が反響を呼び、復興支援の絵はがきなどに採用された。
 絵はがきに注目した出版社から絵本の出版話を打診され、2012年冬に内田さんを紹介された。神田さんは「震災を経験した人もしていない人も読めるよう詩の絵本にしてはどうか」と提案。内田さんが1カ月ほどで詩を作ってくれた。
 「人は誰でも誰かに愛され、幸せになるため生まれてきたというメッセージが伝わってきた」。まだ悲しみの中にいる人にも届けたいと、葛藤しながら絵筆を握った。
 表紙の少女の後ろ姿は「生きる」の子どもたちのその後を重ねた。震災後には描けなかった海を描くこともでき、自身も絵も成長していると感じた。
 「最後まで人のために頑張った祖父の思いを引き継げた気がする。難産だったけれど、すてきな作品になった」と神田さんは語る。
 「なみだはあふれるままに」(PHP研究所)はB5変型判、32ページ。価格は税別1300円。一般書店で購入できる。

最新写真特集

記事データベース

企画特集

先頭に戻る